和歌山市
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第101社 発達障がい児の服の悩みに寄り添う
fukufuku312

業種:
卸売・小売
職種:
ものづくり/ その他(分類できないものも含む)/

企業訪問日記をご覧の皆様こんにちは!

 

今回ご紹介するのは、令和2年度和歌山市チャレンジ新商品グランプリに選ばれた「タッチdeきるんT」「オールフロントT」を開発した企業、“「fukufuku312」”です。

 

本日は、代表者の前田 香さんにお話しを伺いました。

 

 

Q.初めに事業立ち上げの経緯について教えてください。


 
私には現在10歳になる発達障がいをもつ息子がいます。息子は昔から物事を注目して見ることが難しく、服を着る際に、裾のどこをもてば良いか、どこに腕や首を通せば良いのかがわからないようでした。また、触覚過敏であるために、肌に触れるものに敏感で、服の素材によってはチクチク感じたり、冷たく感じたりするようで、着ることができませんでした。そのため、息子が一人で着ることができる服を市販の服の中から探すことが非常に大変でした。その中で、「自分で息子の服を作った方が楽なのでは」と思い、息子の服を作り始めました。

 服を作り始めたとき、自分と同じように、発達障がい児に寄り添った服が少なく困っている親子がいるのではないかと思い、発達障がい児の保護者100名にアンケートを取りました。その結果86名の方が「子どもの服に悩みがある」という回答でした。発達障がい児に寄り添った服を求めている方がたくさんいるとわかり、fukufuku312の活動を始めました。



Q.「fukufuku312」という名前の由来について教えてください。

 

 元々、事業を立ち上げるつもりはなく、趣味で服を作り、それをSNSに投稿していました。そのSNSのアカウント名が「fukufuku312」でした。fukufukuという名前には、この服でみんなが幸福になりますように、という意味を込めています。また、息子がいなかったら、服を作ったりしていないだろうと思い、息子の誕生日を加えた「fukufuku312」をアカウントにしました。そして、事業を立ち上げることになって、このアカウント名をそのまま事業所名にしました。

 

 

Q.「タッチdeきるんT、オールフロントT」発売に至った経緯について教えてください。


 
当時8歳だった息子は1人で服の着脱ができませんでした。周りの子は3歳にもなれば1人で着脱できるようになる中、私はいつまでこの子の服の介助をしないといけないのだろうか、そんな思いから、息子が一人で着脱ができる服を作ろうと思い「タッチdeきるんT」を作りました。

 また、先に実施したアンケートで、一番多かった悩みは「服の前後裏表がわからない」でした。注目して見ることが難しい発達障がい児に、衿ぐりの違いやタグの位置を教えることは難しいことです。色々模索する中、「服をどうやって着ても正解になればいいやん!!」と思い「オールフロントT」を作りました。

 どちらの服もアンケートでの悩みに出来るだけ答えられるように工夫を詰め込み、こだわって作りました。

 

(写真左:タッチdeきるんT、右:拡大したもの。肌に優しい素材を使用)

 

 

Q. 「タッチdeきるんT」、「オールフロントT」とはどういった服なのでしょうか


 
「タッチdeきるんT」は発達障がい児が一人で着脱の練習ができることを目的に開発したTシャツです。特徴のひとつとして、後ろの裾を長くすることで、前後の身頃が広げやすくなっています。また、腕の着脱がしやすいようにアームと身幅が広くなっています。そして、どこを握って服を着れば良いかわかりやすいように、手のマークを付けています。このマークは触っただけでわかるように凹凸があり、触っても冷たく感じないタイプのプリントとなっています。

 

(後ろの裾が長く、背面に手のマークが付いている)
逆に服の裏表にあるロゴは触覚過敏に配慮した凹凸のないプリントにしています。服の裏側にもロゴがあるのは、服を着る際にこれを目で追っていくと、自然と衿ぐりから頭が出るようになっています。縫い端は触覚過敏に配慮し、折り伏せ縫いと三つ折りにすることで、ビラビラしないようになっています。同じ理由で、タグもつけていません。

 

(裏側のロゴを目で追いながら着ると、衿ぐりから頭が出る) 


 「オールフロントT」は前後裏表どうやって着ても正解になるTシャツです。「タッチdeきるんT」と同様に、触覚過敏に配慮したプリント、縫い方になっています。Tシャツの前後裏表がわからない、学校等で一人での着替えに自信がない、そんなお子さんにおすすめです。また、間違ったことを指摘されると嫌がる、ゆったりした服でないと着脱が難しいお子さんにもおすすめです。

 

(左:オールフロントT  右:袖口の裏側にもロゴあり。裏表前後関係なく着ることができる)

 

 

Q. 開発に関して苦労した点について教えてください。


 
発達障がい児が注目して着られるようにするのにとても苦労しました。「タッチdeきるんT」にある手のマークは、最初は星のマークでした。しかし、星のマークだと息子は興味を持てず、注目することが難しいようでした。色々模索する中で、見た目もわかりやすい手のマークになりました。

 また、作業所との連携でも苦労がありました。私自身が服を作るプロでもなく、作業所の方も小物などを作るのがメインであったため、素人同士で服を作り始めました。やり取りを重ねながら、やっと思い描いていた服が完成しました。現在は同じ作業所でパターン制作、縫製を1点1点手作業で行って頂いております。

 

 

Q.新聞やテレビで紹介された影響はありましたか?


 
発達障がい児には服の悩みがあるということを知って頂くきっかけになりました。また、服に悩む当事者親子や療育関係者からは、こういうのを待っていたと共感の声を頂き、協力したいと言って下さる方も現れました。

 

 

Q. 実際に購入された方からの感想はどうですか?


 
「畳んだ状態から、一人で服を着られるようになった!」、「着心地が良く着脱がしやすい!」など喜びの声をいただきました。

 また、療育関係者からは「すごくよく考えられている。支援への工夫のアドバイスも良い。服の着方の教え方など、自身の経験も交えた説明でとてもわかりやすい。」との意見をいただきました。

 このTシャツによって日常的な服の悩みがなくなり、毎日笑って過ごせるきっかけになったと思うと、とても嬉しいです。

 

 

Q.今後の目標や計画について教えてください。


「発達障がい児にも寄り添った服がありふれた世の中にする」


これがfukufuku312の最終目標です。発達障がい児には服の悩みがあることを多くの方に知ってもらうために、できることを続けたいと考えています。また、fukufuku312をはじめ、特定のお店からでないと発達障がい児に寄り添った服が購入できない状況です。それは当たり前の状況ではないので、色々な企業とコラボし、全国どこでも、気軽に発達障がい児に寄り添った服を手に入れることができるような、そんな世の中にしたいです。

 

 

前田様、本日はお忙しい中ありがとうございました。