企業訪問日記をご覧の皆様こんにちは。
今回は、継承と改革で地域と共に歩み続ける企業「社会福祉法人紀伊松風苑」を紹介します。
会社について
Q.企業理念について教えてください。
「“ねたきり(認知症)になっておられる高齢者、又その介護をされておられる家族に幸せを”、との創業の精神にのっとり、家族にかわって入所者が安らかに楽しく老後を過ごすことができる施設運営を行う。」を理念としております。また、理念を引き継ぎながらも時代の流れに合わせて解釈を広げ、よりよいサービスを提供できるよう努めています。
Q.和歌山市で最も歴史のある社会福祉法人であるとお聞きしました。開設に至った経緯やここまでの歴史について教えてください。
昭和38年に老人福祉法ができた事をきっかけに、市から「特別養護老人ホームをやってみませんか?」というお声掛けをいただき、お年寄りとお世話されているご家族の実情を憂慮し、昭和41年に「特別養護老人ホーム紀伊松風苑」を開苑いたしました。
その後、特別養護老人ホームの増築・改築や、ショートステイ、ホームヘルパーなどの事業を開設し、また、市に移譲していました救護施設(かつらぎ園)も再度運営することとなり、現在に至ります。
Q.現在どのような就業場所(施設)がありますか?
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム紀伊松風苑)
・短期入所生活介護(紀伊松風苑ショートステイ)
・通所介護(紀伊松風苑デイサービスセンター)
・訪問介護/ホームヘルパー派遣(紀伊松風苑ホームヘルプサービス)
・居宅介護支援事業(社会福祉法人紀伊松風苑)
・和歌山市地域包括支援センター有功
・救護施設(救護施設かつらぎ園)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム紀伊松風苑なるたきのさと)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム紀伊松風苑ひだまりの家)
・小規模多機能型居宅介護(小規模多機能型ホーム紀伊松風苑そのべの丘)
があります。
仕事について
Q.職員教育についての特徴はありますか?
職員を育てる教育システム「エルダー制度」がしっかりしていると自負しています。先輩社員が教育係となり、実践を交えながら実務指導をします。
仕事の習熟度の記録も作り、引継ぎもしっかり行っています。どの先輩からも同じように教えてもらえるシステムになっていますので、未経験の方でも安心して働いていただけると思います。
Q.独自のイベント等の取り組みはありますか?
独自のイベントとしましては、ほぼ毎月、地域の方々とのお食事会を開催しています。独居の方を中心に、職員総出でお迎えに行き、季節のお料理を召し上がっていただく会です。また、お食事会に併せて、振り込め詐欺や防火の啓発、寸劇やカラオケ等を楽しんでいただいております。
お食事会の開催数は300回を超え、毎回80人以上の方にご参加いただいており、地域のイベントの一つとして親しまれています。
また、当施設は事業所内保育所がありますので、ハロウィンの時は子ども達がお菓子を貰いに回るなど、大変盛り上がっています。
その他にも、ヨガ教室を開いたり、お祭りの時に和太鼓の演奏を行ったりなど様々なイベントを行っております。
(子どもたちと一緒に楽しむこどもの日の風景)
Q.仕事のミス防止や効率化等についての取り組みがあれば教えてください。
仕事については、細かいマニュアルの作成と更新を徹底していますので、未経験の方でもわかりやすいようになっています。
また、入社何年でここまで仕事ができるであろうというようなガイドラインも作成しており、基本的には、そのガイドラインに沿って仕事をしていただくため、異動に伴っていきなり違う仕事を任される事もありません。
全体として、施設の利用者様への対応については、できるだけマニュアル化している一方で、職員への対応については、働きやすさやメンタル面等について、一人ひとりに柔軟に対応する形をとっています。
3か月に一回は面談を実施し、仕事や人間関係の不安がないか聞き取りをしています。不安や不満が大きくなってしまう前にできるだけ解決し、定着していただけるよう努力しています。
Q.仕事のやりがいにつながった話があればお聞かせください。
一番記憶に残っている話をお話します。
以前、体調があまりすぐれず、寝たきりの状態で、施設内でも長時間ベッドから離れるのが困難な利用者様がいらっしゃいました。その方のご長男の結婚式が8か月後に予定されていることを知ってからのお話です。
その方は奥様を亡くされ、ご長男の結婚式には、ご自身がどうしても出席したいという意向を強く示されました。また、ご親戚の方々も「できれば、出席させてあげたい」と私たちスタッフに話されました。
しかし、当時の利用者様の状態では、車で移動することも、長時間座っていることも、身体への負担が大きすぎてとても難しいと誰もが思いました。
しかし、「私たちも、この夢を叶えさせてあげたい、何かできることをしよう。」とドリームプロジェクトを立ち上げました。
ここから8か月先の夢に向けて、利用者様と相談しながらメニューを作り、リハビリが始まりました。離床時間を多くするにはどうすればいいかを考え、楽な姿勢を工夫し、辛い日でも意欲がわくような場所を選び、スタッフが励ましながらお出かけしました。毎日の起立練習の成果もあり、すこしずつ離床時間が長くなり、長時間ベッドを離れて座っていることも可能になりました。
結婚式には当苑のスタッフがボランティアで付き添い、見事に結婚式への出席を果たせたのでした。
当日はリハビリに努力された達成感とご長男の晴れの姿を見られることの喜びに満ちており、私たちスタッフも「あーよかったぁ」と心から思いました。
「理想の夫婦は両親です」というご長男の挨拶を聞いた利用者様の目には涙が光っていました。
苑に戻ってから、「息子の一生に一度の晴れ舞台を見ることができて本当に良かった。みんなありがとう!」とスタッフに言葉をかけてくださいました。この時は、私たちもドリームプロジェクトの大成功に感慨無量で胸がいっぱいになりました。
職場環境等について
Q.外国人留学生の受け入れにも積極的だとお聞きしました。受け入れに至った経緯と受け入れによるメリット等をお聞かせください。
一昔前は、人材不足の中でも世間ではまだまだ介護に外国人雇用は無理だと言われていましたが、当苑では教育プログラムに自信がありましたので、外国人の方でも絶対大丈夫だと思っていました。そのタイミングで、外国人向けの専門学校の先生方とお話する機会があり、ベトナムの医療短期大学に当苑の紹介をするため訪問いたしました。
その時に来ていただいた方も今では「介護福祉士」の試験を受けるまでになり大きな戦力となっています。
外国人の方は一生懸命に働いてくれるため、日本人のスタッフも刺激を受けていると思います。
しっかり、仕事の分担もできていますし、外国人スタッフの方がいるおかげで日本人スタッフが助かっている部分も多く、ワンチームで働けています。
Q.新しいことにチャレンジしている具体的な取り組み例について教えてください。
介護保険制度以前の措置の時代、介護の仕事は「女性の仕事」でした。しかし、男性も介護の現場にでるべきだと考え、利用者様にアンケートを取った結果、「男性のほうが良い」という意見もあったことから、男性職員をどこよりも早く配備しました。当時は画期的な取り組みだったと思います。
また、最近では、「子育てしやすい職場環境への取り組み」に力を入れており、施設内保育所の開設や、女性の育休取得率100%に加え、男性の育休取得実績もあり、時間外労働も各月4時間以内という実績が認められ、「くるみん認定企業」に認定されました。
その他にも、スタッフの負担軽減の取り組みとして、介護ロボットの導入や、先ほどお話した外国人介護人材の活用など、積極的に進めています。
Q.職場の雰囲気を教えてください。
最近は、ホテルを借りて年一回ビアパーティーを開催している他、各部署ごとに食事会を開いています。同僚で旅行に行ったりする職員もおり、和気あいあいとした雰囲気になっています。
Q.職員の資格取得、キャリアアップ等、働くための支援制度について教えてください。
資格を持っていない方でも、無料で初任者研修を受けていただけますし、その後の様々な資格取得に関する研修なども会社の費用で勤務時間中に受けていただける制度を設けていますので、個人のやる気次第でどんどんキャリアアップできる環境を整えています。
また、働くための支援制度としては、子育て支援に力を入れており、産休育休を使うことができるのはもちろんですが、子育て期間の時短勤務にも対応しており、事業所内保育所と連携して、本人の希望を第一優先にしたシフトを組むことで、子育て環境の充実を図っています。
今後について
Q.今後の目標や計画について教えてください。
地域に広げた社会福祉法人を目指すため、引きこもりの方に何かきっかけを作って働いてもらえるよう工夫したり、事業所内保育所の次段階として、地域にも開放した学童保育を始めたいと考えています。独居老人に向けたお食事会も継続し、地域と共生した社会福祉法人として更に進んでいきたいと思います。
Q.最後に現在就職活動中、今後活動する方へのメッセージをお願いします。
介護のイメージといえば、「きつい」「休みがない」「給料が安い」といったようなイメージを持たれている方が多いと思いますが、給料に関しても処遇改善加算もあるため良くなっていますし、休みについても、通常の休日や夜勤明けの非番などを組み合わせて連休を作ることも容易です。シフト制なので暦どおりの休みではないというだけで、有給休暇も含め十分に休むことができます。
仕事内容についても、様々な器具、道具などの進化により腰への負担なども含め、現在きつさは無くなっています。介護の仕事は国家資格も必要であり、経験を積んでスキルアップ・キャリアアップをするプロの仕事です。現場の仕事を続けていくこともできますし、資格を取得して相談業務に移行したりなど、ライフプランをたてやすく、長く続けられる仕事になっています。
訪問日記担当者の感想
「最近は職場改善と新しい器具の登場で福祉の現場も良くなってきている」そういった話はよく耳にしていました。
実際に現場を見ても、従来の介護のイメージとは違い、スタッフの負担が減るように日々工夫と用具の進化が進んでいます。しかし、個人的に一番感心したのは、国家資格等にチャレンジしながら生涯安定して働き続けられる環境があることでした。
施設長がおっしゃっていた、「介護の仕事は誰でもできる仕事ではない、国家資格がある「プロ」なんです。だからこそまじめに働けば、生涯続けられる仕事になるのです。」という言葉がとても印象的でした。介護の仕事は現場で働くスタッフだけではありません。資格を取り、管理業務や相談業務に従事することもできますし、もちろん現場で上を目指すこともできます。将来的に様々な選択肢があるからこそ、自身の状況の変化にも対応し、仕事を続けられるのだと思います。
人と接する仕事、人を喜ばせる仕事は好きだけど福祉はちょっと・・・と躊躇している方は是非お話だけでも聞きに行ってください。一生モノのスキル・資格と仕事を手に入れるチャンスかもしれません。
横山様、本日はありがとうございました。